Group:=terra 建築
Title:=●私たちの現在生きている時代。
From :=WorkPad 版 Palm Desktop
Create:=00/08/26 10:08
Udate :=00/08/26 10:08
●私たちの現在生きている時代。
AICA EYES VOL31 1999SUMMER
人口が爆発的に増加している。環境破壊や資源の枯渇化が急速に進行している。途上国の生存と豊かさを求めての急速な経済成長による環境破壊と、先進国における資源エネルギーの過剰消費による環境破壊は、いまや地球生命件を脅かすに至っている。
特に先進国における自己目的化した量的成長、自ら欲望を作り出してそれを満足するために努力するといった消費行動、また大量生産、大量消費、大量廃棄をもたらす市場経済と先端技術に内在する欠陥(リサイクルには膨大な環境影響を伴うなど、地球環境容量が考慮されていない。また市場経済に環境コストが考慮されていないなどの欠陥)によって、このような近代工業文明が地球規模では継続不可能であることは誰の目にも明らかであるだろう。
私たちの日々の暮らしが、直接的、間接的に地球環境に影響を与え、温暖化、オゾン層の破壊、水の富栄養化、資源の枯渇化などの環境影響を引き起こしているのである。地球環境そのものも時と共に地質年代的には変化するが、人間活動そのものが地球環境に今や影響を及ぼし、変化させるようになってきたのである。これは400万年という人類の歴史の中ではじめて直面する事態である。その長い歴史の中で、人類は限られた地域環境の制約の下で文明を興亡させてきたが、ここにはじめて最終的な制約としての地球の限界に直面しているのである。産業経済活動は地球環境と分離できず一体であることを認識し、地球環境容量の枠内で、豊かで公正で永続性のある文明を作り上げることが、私たちの最も重要な課題となっている。
これをさらに詳しく理解するために、まず世界の環境、経済、社会的側面を占めるマクロ指標を見ておく必要がある。
Sharing the World(Earthscan,London,1998)によれば、
世界人口は、年間1.7%ずつ増加しており、2010年までに34%増加し、2050年にはインド、中国の総人口は、それぞれ16億人に達するものと予測されている。豊かな土壌は年間2.5パーセントずつ減少し、生命多様性も急速に減少しており、成層圏のオゾン層は年間3パーセント減少し、フロン放出を制限してもオゾンホールは2050年までには閉じないと考えられている。
一方温暖ガスはCO2換算で年間1%増加し、エアロゾルもサルファ換算で年間1%増加しつつある。大気中のCO2濃度はこのままでは50年後には産業革命以前の2倍に達するものと予想されている。また私たちは巨大な資源エネルギー・測量を消費している。
昨年Reasouse Flows−The Materials Basis of Industrial Ecinomics(WRI、国立環境研究所など)という報告書が公表された。この報告書によれば、日本、米国、ドイツ、オランダにおける国民一人当りの年間の総物質需要量(TMR=Total Material Requirement)は1991年において、日本は45t、他の3ヶ国は85tであった。総物質需要量には、経済活動に直接投入される物質のみならず、資源の採掘段階での覆土の移動や廃棄物の発生などの隠れたフローも含められている。
こうした隠れたフローは膨大な量である。調査対象となった4ヶ国の隠れたフローは、TMRの55〜75%を占めている。また経済のグローバル化に伴い、資源がある国で採掘され、他の国で製品が製造され、さらに別の国で使用されるということがしばしば生じる。そのためTMRのうち、外国由来の割合が35〜70%に達すること、小さい国ほど海外への依存率が高くなること、環境コストは自然資源を採掘し輸出するために環境を改変する国々に降りかかることが示されている。
すなわち従来の材料開発では、ライフサイクル全体での環境影響、リサイクル性について真剣に考慮してこなかったことは明らかである。その結果、多くの貴重な金属が日常的に一方的に使い捨てられているのである。