施政者は手の内を明かさない。,1997/9/3 0:00:00,
施政者は手の内を明かさない。
この戦争を境にして、日本人は19世紀後半に自家製で身につけたリアリズムを失ってしまったのではないかという気がしないでもありません。
ところが戦勝の報道によって国民の頭がおかしくなっていました。賠償金をとらなかったではないかと反発して、日比谷公会堂に集まり国民大会を開き、交番を焼き討ちしたりする。当時、徳富蘇峰が社長をしていた国民新聞も焼き打ちにあう。蘇峰は政府の内部事情に詳しく、”戦争を終わらせることで精一杯なんだ”ということを良く知っていましたから、国民新聞の論調は小村の講和会議に賛成に回り、結果、社屋を焼き打ちにあいました。
日比谷公会堂は安っぽくて可燃性の高いナショナリズムで燃え上がってしまいました。”国民”の名を冠した大会は”人民”や”国民”をぬけぬけと代表すること自体、いかにいかがわしいものかを教えています。,司馬遼太郎,,書籍,このカードのみ,いかがわしい扇動,ナショナリズム,日露戦争,,歴史